よびごえ日誌
2024.11.14
【2024】よびごえ日誌 vol.15 選曲番外編
タグ:号外
みなさん、こんにちは。小田です。
今回の選曲もその記録を残しておこうと思い、自由曲候補には挙がったけれども、取り上げなかった作品を紹介したいと思います。
いつかはみなさんも、誰かのために選曲をする立場になると思います。何か月もかけて向き合い続ける曲を選ぶ行為は、慎重かつ知識や経験に多分に依存して行われるべきです。1曲でも多くの曲を知っていること、またそれらの曲の教育的な可能性を見つけられる力を、これからも磨いていってくれると嬉しいなと思います。
◆I Will Lift Mine Eyes(曲:Jake Runestad)
Eric Whitacreというアメリカの作曲家がいるのですが、彼の作品を初めて聴いたとき、とてもびっくりしたのを覚えています。日本では”Sleep”(https://youtu.be/aynHSTsYcUo?si=U8Vg6NEbDnTZe8bP)や”Leonardo Dreams of His Flying Machine”(https://youtu.be/Nbek1UnCh48?si=4nOVLt77mnY7FP3u)が流行りましたが、彼の美しいクラスターサウンドは、その後の世界中の合唱作品にも影響をもたらしたのではないかと考えています。
Jake Runestadもアメリカの作曲家で、”I Will Lift Mine Eyes”も美しいクラスターサウンドを特徴としており、加えて静かな美しさと温かさを感じさせてくれる作品です。こうした作品の場合は、人数がいればいるほど演奏効果は高まると思いますが、逆に少人数でどのように音楽を成立させることができるのか、そこは学びとして、みなさんと一緒に探究する余地があると思い、候補にしました。
◆とむらいのあとは
現代における合唱界のスーパースター、信長貴富の初期の傑作の1つです。
「あい」との組み合わせを考えたとき、「世界平和」「戦争」のような愛をテーマにもった作品との相性は良いだろうなと思っていました。「銃より人をしびれさす歌」という言葉は、のちのち、別の作品でも信長が繰り返し使っています。「銃よりひとを しびれさす ひきがね ひけなくなる 歌のこと」、このフレーズに込められたもの、歌の力や可能性を、よびごえのみんなと一緒に考え、共有したいと思い、候補にしました。
◆願い一少女のプラカード
三善晃作曲のこの作品も、「とむらいのあとは」同様の方向性で候補にしました。「Nyon Nyon」と最後の最後まで迷っていたのはこの作品でした。「生きていてほしいんです」という一言から膨らむ想像はとても大きく、そこには全ての生命へのリスペクト、生き物はそのすべてがいつかは死ぬ運命を持っているにもかかわらず敵を作り、殺し合うこの世界への悲しみのようなものもあるように思います。三善晃は本当にたくさんの素晴らしい曲を残してくれましたが、この曲は、歌いながら、考えさせられる、特別な1曲に思います。
◆さようなる折ぞ人歌詠むかし
千原英喜によるこの作品は、『枕草子』のテキストによるものです。
「あい」との組み合わせを考えたとき、平安時代における愛と、現代における愛を比較するようなプログラムはどうかな、と思い候補にしました。余談ながらも、僕の高校による委嘱作品ということもあり、いつかは自分の手で挑戦してみたい、と思っていた作品でもありました。千原英喜による『枕草子』は6曲から成りますが、個人的には、その中でもっとも美しい旋律と和声をもった作品だと感じています。
その他
音源が無い作品で、候補にした曲もいくつかありましたが、そのうちの1曲は西村朗による『式子内親王の七つの歌』でした。
ものすごく長いフレーズが求められるため、みなさんには実験に付き合っていただきましたが、リスクが大きいようにも思い、そのリスクに見合うだけの学びが見込めるのか、と考えに考え、今回は見送ることとしました……。
以上、今年は「あい」と「Nyon Nyon」、全力で良い音楽にしていきましょう!