よびごえ日誌
2025.05.21
【2025】よびごえ日誌 vol.1
タグ:新歓
みなさん、こんばんは。小田です。
新歓を終え、次は合唱祭での新体制のお披露目に向けて、歩みを進めていくところです。
合唱祭の曲目等については、きっと、次回の日誌担当の方が書いてくれると思いますため、僕の方では、今年度の新歓の活動内容に関する裏話を、記録として残しておきたいと思います。
まずはじめに、新体制一番最初の大仕事、新歓のご準備・実施を本当にありがとうございました😌
そして、新メンバーとして、一緒に活動することを決めてくれたお二方、本当にありがとうございます😊
今年度の新歓は、昨年同様に「前へ」(佐藤賢太郎)を扱いました。
新歓稽古を通してみなさんと一緒に考えたいテーマについて、準備段階では「科学」を絡めたいと思っていたのですが、蓋を開けてみれば、次のようになりました。
1日目:主観の交流を通して 楽譜を読むこと⇔表現すること
2日目:より良い戦略のために 楽譜を読むこと⇔表現すること
楽譜からは大きく2種類の情報を引き出すことができます。それは、強弱や速度、表現記号といった〈目に見える情報〉(揺らがない情報)と、当時の慣習や音色といった〈目に見えない情報〉(揺らぐ情報)です。この2種類の情報を認知していないと何が起こるのか、例えば、楽譜に書かれてあること(目に見える情報)をしっかりできるようになってレッスンに行ったのに先生にボコボコにされた、なんてことが起こるかもしれません。片や、目に見えない情報を一所懸命に読もうとしてレッスンにいっても、そこのテンポは楽譜通りにしようね、なんて言われることもあるかもしれません。重要なのは、楽譜から、異なる2種類の情報を整理しながら読み取り、そのバランスを取りながら表現をつくっていくことに思います。
僕たちは、音楽を学ぶとき、いつでも〈基本や素朴な原理〉に立ち返ることが有効です。普段何気なく行っていることに理論という枠組みや整理を与え、それを常にブラッシュアップやアップデートしながら、学びを進めていく必要があります。もしそれをせずに、とにかく一目散に学びを続けるとどうなるのでしょう。例えば、声楽の場合は、発声を理論的に理解していなければ声を壊しますね。もしくは、いつも楽譜を自然に読んで感じたとおりに表現すれば先生に褒めてもらえていたために楽譜を読むことや表現について理論的な整理を行ったことが無い場合に、本当に苦手な作品に出会ったときには、自分の力で演奏を構築することは不可能に近くなります(音源のような参考できるものがない作品に取り組むとき、初めて自分の力の無さに気付くかもしれません)。ピアノの場合は、人体やピアノの構造を知らなければ、音色を意図的に操作することは不可能に近いでしょう(偶然に操作できることはあるかもしれませんがそれは再現性に乏しいので技術ではありませんね)。「練習=やればやるほど良い」という考えは、今日の演奏科学では脳神経障害を引き起こす可能性から否定されますが、そうした基本の知識がなければ、誤った理解によって、自らの人生を、自ら間違った方向に導くことにもなります。
音楽の学びの難しさは、こうした〈基本や素朴な原理〉のように、知識として、安定的な学習が可能なものだけが音楽の学びではなく、主観や戦略といった、再現性よりも柔軟性のある、可変的で、感覚に多分に依存した学びも求められる点でしょう。楽譜から引き出すことのできる〈目に見える情報〉と〈目に見えない情報〉の関係に似ていますね。対極であるこれら2つのものがきちんと視野に入っているような学びの在り方が重要なんでしょうね。
よびごえでは、様々な専攻の学生が、ともに学び、高め合ってほしいと願っています。それゆえに、合唱と教育を扱う場ではありながらも、「音楽とは何か」「音楽を学ぶとは何か」といった、専攻の垣根を超えて誰にとっても役に立つ、普遍的なテーマを新歓の内容としたい、と思い、今回は、上記1日目、2日目のような内容にしました。
参加くださった方は、「主観」を積極的に働かせて楽譜を読むこと、主観を持ち寄って仲間と対話し楽譜からさらに情報を引き出していくことを経験くださったのではないかと思いますし、ある音楽作品を他者と共有するためには、どうすれば伝わるのか、その戦略を立てるために楽譜を読み、表現することが必要であることについて、考えるきっかけにしてくださったのではないかと思います。これらの活動を通して、自身の感性(主観)に依存して楽譜や詩を読むこと(情報を引き出すこと)が意外と難しいということを感じた方もいるかもしれませんし、仲間のアイデアを聞きながら、自分にはない感性に圧倒された方もいるかもしれません。戦略についても同様に、自分とは異なるアイデアや論理の組み立てに、仲間のすごさを実感した方もいるかもしれません。このどちらもが、これから、みなさんが演奏行為を深めていくために役に立つ考え方や実践だと思いますので、普段のレッスンや、よびごえでの活動でも、積極的に使っていってもらいたいなと思いますし、大切に育てていってほしい力だなと思います。
さて、これから合唱祭までの間、みなさんはどれだけ変化し、新しい知識や技能を獲得していけるのでしょう。
発声の技術(音域の広さ、明るくよく響く声等)やアンサンブルの技術(和声の作り方、声部間の音量バランスのとり方、仲間と共に音楽をつくる等)、言語能力(日本語・英語の発音や意味の理解等)、楽譜から情報を引き出し表現する力など、様々に勉強できることがある2曲だと思います。自分なりの目標を決め、合唱祭に向かう活動の中で、それぞれのペースでたくましくなっていってくださいね。僕は、みなさんの変化を心から応援していますし、僕もまた、成長したいと思っています。
次回はどなたが日誌を書いてくれるでしょうか。合唱祭まで、駆け抜けましょう!😌