よびごえ日誌
2025.08.08
【2025】よびごえ日誌 vol.3 前期まとめ編
タグ:合唱祭
みなさん、こんにちは。前期も終わり、いかがお過ごしでしょうか?
前期期間中は天候が不安定だったこともあり、僕も含め、体調を崩されている方が多く、今までになく、稽古でご苦労をおかけしたと振り返っています。そうした中でもお一人お一人が稽古に前向きに取り組んでくださったり、会場確保や開錠・施錠、オンライン時はPCのご準備など、さまざまに運営にご協力をいただいたこと、本当に感謝しています。
今回のよびごえ日誌では、前期の活動を簡単に記録しておきたいと思います。記録が無いと、いつの日かの未来に、この期間中を振り返ることができないので、それは寂しいと思いました。
(後期の活動に向けたメッセージを最後に書いています。)
今年の合唱祭では、信長貴富作曲の「こころよ うたえ」と、ディズニー映画『ヘラクレス』より「Go the Distance」の2曲となりました。1曲はみなさんから、もう1曲は僕が選ばせてもらう、というスタイルでした。
「こころよ うたえ」は、みなさんが選んでくださった作品でした。
僕はいろんな現場で耳にはしていましたが、この曲をきちんと勉強したことがなかったので、良い機会となりました。個人的には、エネルギーをひたすら発散するタイプの作品(とりあえず大きな声を出しておけば良いタイプの作品)は、あまり演奏したいとは思いませんが、この作品については、そうした演奏をいくつか聴いたことがあり、楽譜がそれを要求しているのかな?という先入観のある作品でもありました。
実際、詩と楽譜を見てみると、決して、そんな単純な曲ではなく、むしろものすごく繊細な作品だと思いました。加藤さんが詩の全編を共有してくださり、この詩を感じることができました。感謝です。
詩の全編では、「風、暦、光、街、弱さ、道、仕事、夜、涙、詩」、これらについて語った後、最後に語られるのが〈心〉についてです。規模の大きな詩の最後の〈心〉の部分のみ合唱作品化されたわけなので、もちろん、この作品のことをきちんと勉強しようと思うと、この詩全体から主人公に関する情報を得ることは大切です。
この主人公は、風が知らんぷりをしても自分から風にあいさつをしようとしたり-、人生はつらいことばかりで-、世界は明るくても、自分の中にはほのかに暗い心があって-、弱さは僕が守ってあげる、だけども僕は誰が守ってくれるんだろうと思ってみたり-、夜が空から降りてきてぼくの隣に座ってくれたら、その肩にもたれてみたいと思ったり-、韻律(規則的なもの)があれば避けて通ったり-。誰にでも優しくて、決して陽キャではなくて、誰かに甘えてみたいと思ったり、でもルールには縛られたくない……、この主人公に、僕は共感できるところがあります。みなさんはどうでしょう?
「こころよ うたえ」の歌いだしは、いきなり、「こころよ」という言葉が2回繰り返され、「だから こころよ せめて うたえ」と始まります。楽譜だけを見ていると、「だから」という言葉の意図が不鮮明で(何に対しての「だから」なのか分からない)、「せめて」という言葉も同様です。そうしたこともあり、稽古では、この曲の理解を深めるために、2つの問いを投げてみました。
1.なぜ前置きが無い中でいきなり「だから こころよ」と始まるのか なぜ心に対して「せめて歌え」なのか
*楽譜にフォルテと書いているから大きな声を出せばいい、という演奏(思考)から抜け出したい
2.「ぼく」はなぜ「思いっきり肯定的な歌を聴きたい」のか
*肯定的な歌を聴きたいという箇所のエネルギーが再現部を誘っているため、ここの解像度を高くしたい
みなさんに考えてもらった内容は、次の通りでしたね。
1.
「だから」は一般的には前置きを踏まえて使う言葉なのに、今回は前置きが無い。
>歌いだしの前に、詩には描かれていない、〈なにか〉があった説
>僕は哀しく、切なく、肯定的な歌を聴きたい「から」、歌ってほしい
「せめて」は、歌うという行為にかかっているのか、心という対象にかかっているのか。
>たぶん、歌う行為にかかっているのではないか?
心にある複雑さや空虚、震え、繰り返しは「消えてしまう」 ➡ 「だから」「せめて」歌え
上手く言い表せないけど、たしかに在る、というのが心なんじゃないか
2.
「ぼく」にとって、なにか大きな出来事があって、打ちひしがれている状況で、いまこういう状況だけど肯定的な歌を聴きたい、ということなのでは?
「ぼく」はいま、哀しく、切ない状況
明るかったり、元気にしてくれる、いまの自分を変えてくれる歌ではなくて、「いまの自分のままでいい」と言ってくれる歌が聴きたいのでは?
そういう歌を心が歌ってくれることで、自分が自分を認められるのではないか?
「こうだよね」と寄り添うような歌を聴きたい
詩の解釈について、答えはありません。大切なのは、解釈行為を通して、自分が心から共感できたり納得できる意味付けを行うことです。それがなければ、ただの事務的な歌(音量・強弱変化・テンポ等を守っているだけの演奏)になってしまいます。
僕たち人間は、音の高さや長さ、音色をコントロールすることのできる楽器ですが、同時に、世界で唯一の、思考できる楽器であり、感情を持つ楽器でもあります。「人間という楽器の可能性を最大限に学ぶこと」、これは、音の高さがあっていればOK、発音がきれいだからOK、ということではなく、どんな音楽がしたいのか(頭を使い)、何を感じていて(心を使い)、だからどう歌うのか(体を使う)、このすべてを使うこと、そしてそのバランスを学ぶことなんだと思います。
「こころよ うたえ」という作品は、歌うことが大変な作品だったと思いますが、みなさん、本当に素敵に歌ってくださり、良い学びの時間をありがとうございました(当日にもらった講評やコメントにも励まされましたね)。
「Go the Distance」は、僕の選んだ作品でした。僕はこの曲の音楽と、テキストに、みなさんの心に大切にしてほしいものを感じ、選びました。
よびごえのみなさんが持っている合唱や音楽に関する知識や技能を待っている人は、この日本に、もしくは世界に、本当にたくさんいます。まだ出会っていないだけです。発声や選曲、練習の進め方、チームの在り方など、今みなさんが、稽古を通して経験したり考えてくださっていることを、いつの日か、未来のだれかのために活かしてくれると嬉しいなと願っています。
「Go the Distance」という作品で描かれる主人公は、ザ・アメリカを感じるヒーロー物語ですが、本当のヒーローに大切なのは、力(物理的な力や権力、名声)だけでない、心の強さであるというこのメッセージは、音楽にも、教育にも当てはまると思っています。技術だけでなく心も、知識だけでなく優しさも。みなさんがこれから出会う子どもたちからすると、みなさんがヒーロー、ということも大いにあるでしょう。音楽をもっと楽しいと感じさせてくれたり、困っている時に助けてくれたり、人生で大切なことを教えてくれたり。
内容だけでなく、この作品は音楽ももちろん素晴らしかったですね。石丸さんが楽譜を見やすく調整くださったり、英語のディクションについては柳本さんや石丸さんが大いに助けてくださいました。音楽について、書きたいことはたくさんあるのですが、現時点であまりに長文なので、みなさんがこの曲の音楽について考えてくださったこと、感じたこと、良かったこと、苦労したことなどを、この曲との思い出として、これからも覚えていてくださると嬉しいなと思います。
最後に1つ、後期のよびごえの活動に向けて、みなさんへのメッセージを残しておきたいと思います。
みなさんがいつの日か、だれかに音楽を教える日が来たとき、そこで子どもにかける言葉、みせる表情、聴かせる音、それはきっと、みなさんに音楽を教えてくれた先生や、一緒に学んだ仲間からもらったたくさんの気づきや思い出がベースになるんだろうと思います。
少なくとも僕はそうです。高校・大学・ドイツ、それぞれで教えてくれた先生や仲間の音楽との向き合い方、僕みたいな人間とも真剣に向き合ってくれる優しさ、かけてくださった言葉、それは、いつでも僕の頭にあります。1つ思い出話ですが、本番前に緊張していると、「これをグイッと飲むと声が良くなる」と言われ、ウォッカを一気飲みしてから歌ったブロムシュテット指揮のブラームスで聴いた音の景色・形は、本当に美しいものでした。本当に美しいものはまじめさだけでは見えないことを、ロシア人の仲間が気づかせてくれました。
先生や仲間がかつて僕に与えてくれたほどの素晴らしい体験を、僕からみなさんにプレゼントできる自信はないですが、ただ、よびごえでの活動を通して少しでもみなさんの人生の役に立てれば嬉しいと心から思っていますし、活動の中で気づいたこと、考えたこと、そこで出会った仲間との時間、これらの本当の価値は、みなさんがいつの日か、だれかに音楽を教える日が来たときに初めて決定づけられるんだと思います。
後期は春こんに向けて、ご自身の限界を超える体験をしてもらいたいと思っています。自分で自分を(適度に)追い込むことに加えて、仲間の強さや優しさに触れながら、大きく成長できる春こんにしていただけると嬉しいです。僕にできることは、全力でサポートします。みんなで一緒に強くなりましょう。一緒に価値のある挑戦にしましょう。
夏休み中、僕は春こんの曲を探します。春こんへの参加希望調査はお盆明けにご連絡する予定です。
……、こうしてよびごえ日誌を書いていると、みなさんに会いたくなりました。後期、また元気にお会いしましょう。お悩み・話したいことあるなどあれば、いつでもご連絡ください。夏休みのうちに合唱についてもっと勉強したいよ、という方もウェルカムです。

企画・調整くださったななみさん、ありがとうございました!
買い出しに行ってくださった室伏さん、こうきさんも、暑い中、ありがとうございました。
またの機会に、全員がそろうといいなと思います🌞
