よびごえ日誌


2020.07.16 【2020】よびごえ日誌 vol.008
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こんにちは!B類音楽専攻の神谷咲妃です。
梅雨も終わり、夏の暑さが続く日々となりました。そして学芸大学もようやく春学期が終わり、長い夏休みが始まりました。また7月から対面授業が一部再開されましたが、やっぱりレッスンは対面に限る!と改めて思いましたし、何より先生や同期に会えるというだけで刺激になります。
さて本日のよびごえ勉強会では、普段のようにグループワークと個人ワークでそれぞれ1作品について考え、そして今回は最後に当団3年生佐藤花音さんによる課題研究の発表も行いました。以下、ワーク内で出た皆さんの意見を挙げていきたいと思います。
 
 
【グループワーク】
『マザーグースの5つの歌』より『ソロモン・グランディ』
谷川俊太郎作詞/青島広志作曲
 
①第一印象
◇スウィングの楽しい曲調なのに、歌詞が物騒
◇お客さんを巻き込む作品→演奏会向け
◇自由表現の「騒ぐ」部分が面白い
◇無邪気
 
②予測される歌唱技術面での困難箇所
◇波線部分(=自由表現)で何をするか
◇テンポが速い、跳躍や付点のリズムが多いということによる譜読みの難しさ
◇モチーフの付点のリズムをどうとるか(正確さ、ジャズ調のどちらに合わせるか)
◇「騒ぐ」部分からpへの急激な移行
◇冒頭のbunのコントラバスのモチーフの歌い方
◇最後の高音の伸ばしと和声
◇指導者としての舵取り
 
③この作品ならではの体験・学び
◇日本語に訳された曲のため、原曲との比較鑑賞が可能
◇「マザーグース」について、ジャズ調の歌唱法についての学習
◇楽しさを共有する術、また恥ずかしがらずに表現するということの学習
◇歌詞に込められている「皮肉」の読み取り
◇技術を土台とし、その上で「遊ぶ」ということ
 
④この作品を取り扱った先に、合唱団にどのような変化があってほしいか
◇固定観念に囚われない作品との向き合い方を学ぶ
◇音楽を楽しむものということを思い出す
◇「自由」に立ち向かう勇気
 
 
【個人ワーク】
『ゆずり葉の木の下で』より『モン・パパ』
谷川俊太郎作詞/信長貴富作曲
 
①第一印象
◇家族の様子を、言葉でも音型でも表しているような曲。
◇歌詞はけっこうパパが気の毒に感じる。
◇性別の役割がステレオタイプ
◇おどけた曲調だが、内容が辛辣
◇声部による人物の割り振りがあるのが面白い
 
②予測される歌唱技術面での困難箇所
◇おどけた雰囲気を出すための臨時記号が多い旋律で、音取りが難しい
◇全体的なまとまりや音色の統一感
◇同じような言葉でも、出てくるたびに微妙にリズムの変化がある
◇スタッカートで短い音が多く、響きをつけるのが難しい
◇何度もあるテンポ変化
◇児童合唱と女声のユニゾン箇所の合わせ方
◇児童合唱のパートにも跳躍が多く難しい
◇男声「ンパパ」の発音
◇男声の自信を失う瞬間
◇女声「最後のオクターブ」
◇「けれど」の歌詞の歌唱法について、1つの言葉を、1つの言葉として聞こえるように歌うこと、その一方で個性は失わない。
 
③この作品ならではの体験・学び
◇お互いの立場の素直な気持ちを聞ける
◇それぞれの声部に、それぞれの役割があるため、対等な関係で参加できる
◇価値観の異なる集団との出逢い。またそれによって気付く今までの固定観念(練習方法・他人との関わり方・音楽の捉え方)
◇子どもと大人の相互の学び合い。子どもは大人から歌唱技術で学べることがたくさんあり、大人は子どもの表情の豊かさや、先入観のなさから学ぶことがある。
◇声部による役割分担が明確な曲のため、それぞれの役に入り込み、演じるというオペラ作品に似た体験
◇普段同じ空間で歌合わない人との交流や、関わろうとする力。
◇練習時の時間間隔の違いとその折衷
◇「みんなちがってみんないい」
 
④この作品を取り扱った先に、合唱団にどのような変化があってほしいか
◇同世代同士では気付けない癖や、暗黙のルール等について改めて考え直すようになる
◇この作品の中での新たな学びを、元の合唱団に戻ってからも活かす
◇それぞれが自分にしか出せない音を持っていること、個性が音楽表現に良い影響をもたらすことを知る
◇様々な人と関わる意欲を持つ
◇他人から学ぶという姿勢を育んでほしい
 
 
【団員による課題発表】
「声楽のレッスンにおける、行間を読む、とは具体的にどのような力なのか」
 ―行間を読む:文字面に現れていない筆者の真意をくみ取る
東京学芸大学 B類音楽専攻 3年 佐藤花音
 
今回このようなテーマで佐藤さんが、目止めた結果についてのお話を聞きました。実施方法は、まずネット上にあがっている大学の先生によるレッスンの動画を素材として、次に動画内で、教える人が示していること、そうでないことを明確にした表を作成します。そしてその表から学ぶ人は何を補って思考したらいいのかについて考えをまとめていました。特に今回の講義の際には、動画内で何度も現れた「狙って」という言葉の意図と、またそれがもたらす解釈には、言葉以外の因子の影響があるのかについて考えました。この学習からは、言語による指示を受け取る際に、私たちは音・動作の要素も情報として取り入れているのではないかという結論になりました。つまり「行間を読む」とは文字媒体だけでは成立せず、言葉の抑揚や、顔の表情、身振り…といった様々な情報の関わりに気付くこと、話者の真意を汲み取り、かつ自分自身に応用することが重要なポイントとなるということです。
 
 
今回はとても盛り沢山な内容で、それぞれまた新しい価値観に出会える機会でした。以前よりも新しいことが不可抗力的には手に入らず、自分から求めないと、知識も経験も手に入らない世の中です。引き続き、感染リスクが拡大しないように努めながら、学びに貪欲にあり続けることを忘れずに過ごしていきたいと思います。そして、気負わずに楽しんで演奏会に臨める日が、再び来ますように…!
 
次回のよびごえ日誌はななせにお願いします!(早く会いたいな!)

神谷