よびごえ日誌
2020.06.25
【2020】よびごえ日誌 vol.005
タグ:ワークショップ
こんにちは!A類音楽選修2年の堀切彩愛です。今回も楽曲探求と事例研究を行いました。最初に小田さんから合唱に関する視点として、ドイツの声楽教育についてや演劇と音楽の関係について、また音と言葉の関係についてや文学と音楽の関係について、他の楽器から学ぶことについて、建築と音楽の関係についての本の紹介がありました。
~楽曲探求~
今回のテーマ:同じ曲で違う編曲 どういう理由でどっちを選ぶ?
【グループワーク】
「サッカーによせて」(谷川俊太郎作詩/木下牧子作曲 アカペラ)
1. 作品の第一印象
爽やかで明るい曲 元気・素直
はつらつとしている
メロディーがキャッチー
詩にメッセージ性がある
一体感がある
歌詞が好き
歌いやすそう
青春っぽい
2. この作品を取り扱うにあたって予測される歌唱技術の側面から見た困難箇所
跳躍が多い(6度、4度)
疾走感、テンポ感を保つこと(男声が刻みで女声がその上に乗っかるイメージ)
各パートがメロディーを分担するので役割意識を持つこと
リズムが走ってしまいそう(自分のパートが単独メロディーの所は特に)
高い音も多いのでブレスのコントロールが必要
小節の4拍目にクレッシェンドがある
フレーズの最初に休符がある
シンコペーションのリズムがある
分かれたところからユニゾンになる部分でちゃんと合わせること
似たようなフレーズでも微妙に音が違うこと
3. この作品ならではの体験・学び(特徴)
素朴な音楽に触れる
素朴に見えて深い歌詞に触れる
詩によって声色を変える
「誰かに歌う」意識が持てる
和声感が分かりやすいので楽しく歌える
メロディーとヴォカリーゼのキャラクター付けをする
パート間のメロディー等の引継ぎを意識する
自分のパート以外の音や歌詞を聞けるようになる
アカペラの響きを確かめやすい
同じメロディーが再現部で出てきた時に表現を工夫する
最後のラララはどんな意味か?
4. この作品を取り扱った先に、合唱団にはどのような変化があってほしいか
共感できる詩から勇気をもらってほしい 詩のエネルギーを感じてほしい
アカペラの導入として扱うことで、アカペラへの抵抗を無くしてほしい
メロディーとそれ以外の役割分担について考えてほしい
アカペラの一体感を感じてほしい ボールをつなぐように心をつなぐ
相手に対する配慮ができるようになってほしい
小田さんより
この曲は細かい部分を隠しようがない。シンプルさに気を付ける必要があり、ピアノで言う所のモーツァルト的な感じ。粗が目立ちやすくうまく聞こえさせるのは難しいため、目標設定を指導者がきちんとする必要がある。この曲の純粋さや人間性につながるような所は良いところである。
また、正拍からずれたリズムが多く出てくるため、テンポを一定に保つ視点も重要。きちんとテンポを保てるように指導するには逆算が必要。感情、音楽のエネルギーに負けないよう体でリズムを取る練習をする等、歌唱以外の音や動きを伴う練習を取り入れることで縦をそろえていくのも有効。テンポを直前までわざと遅くして練習しておくのも良い。
詩について気付いてほしいポイントとしては、サッカーには蹴る前のアイコンタクトがある。では言葉が生まれるのはいつか。言葉になる前のコミュニケーションがあるのではないか。私たちは言葉が生まれてくる前にすでに思考しており、そのような「言葉になる前の言葉」に注目して考えてみてはどうか。また、サッカーの一体感をホモフォニーで表現しているのかもしれない。詩とは凝縮された一瞬であるという考え方もある。さらに、谷川俊太郎は詩の解釈の一義性の回避ということを言っており、受け手がどのように解釈しても肯定してくれる存在だが、指導者として学習目標を立てるとしたら、指導者自身の解釈というものも大事になってくる。
【個人ワーク】
「サッカーによせて」(谷川俊太郎作詩/木下牧子作曲 伴奏あり)
1. 作品の第一印象
アカペラ版と比べてエンジンが付いた感じ 流れを感じやすい
意外と伴奏が穏やか
伴奏が付いた事によって型にはまった感じがする アカペラの方が好き
伴奏のリズムに一貫したものがあるので曲想も一定に聞こえる
2. この作品を取り扱うにあたって予測される歌唱技術の側面から見た困難箇所
56小節のテナーの半音階
65小節のバス 同じ音でどう表現するか
77小節から e母音で伸ばす部分がある
3. この作品ならではの体験・学び
掛け合いが減って全員でそろえる部分が増えた 一体感がある
伴奏をヒントに曲想や表現の仕方を感じ取る
歌と伴奏の掛け合い 音楽の向かっている方向を考えられるようになる
4. この作品を取り扱った先に、合唱団にはどのような変化があってほしいか
伴奏の役割・効果について考えられるようになる
和声の変化による曲想の変化やダイナミクスの変化の関係が分かるようになる
小田さんより
曲によっては複数の版が選択できる可能性がある(レアだが)。混声3部はきれいに鳴らないこともあること(バランスを取るのが難しい)、対象も限られていることから名曲は少なめである。版を決める時の決め手についても考える必要がある。アカペラの曲を扱う場合、指導者が伴奏を付けてみるのも有効。伴奏が音楽を規定してしまう側面もあるが、伴奏から得られる情報もある。歌い手が同じ方向を向いたら伴奏を外すのもあり。
~事例研究~
今回のテーマ:笑いを通したレッスンの良い所とは?笑いの効果とは?
「相澤直人による爆笑レッスン」
笑いを取り入れることで縮こまらないようになる
笑いを通して伝えたいことの本質は伝えられている
笑うことで体や心がほぐれて表情も良くなっている
笑い学研究
→笑いには様々な良い効果があるが、笑いには肯定的でない意味を持ったものもある。笑いの量=学びの質ではない。
笑っている時間って必要なのだろうか。何が育っているのだろう。効率は下がる。
しかし笑いには先生と生徒の上下関係を崩す効果があるのではないか。主権が生徒に移っているのではないか。笑いのバランスを取る必要がある。(小田さんの経験)
相澤先生の良例をもとに、笑いを1つの手段として捉えつつ、指導法を選択できるようになると良いのでは。
以上、長くなってしまいましたが今回のまとめです。楽曲探求を通して、自分の好みや何となくの雰囲気だけでなく、曲を通してどんな学びをしてほしいか考えて扱う曲の形態を決めることが重要だと思いました。また笑いを通した指導についてはとても考えさせられる内容だと思いました。笑いには様々な良い効果があると思いますが、笑いを目的にし過ぎると本筋からずれてしまうように感じます。また集団内の関係、集団との関係によっては、笑いが狙った効果を生まない可能性もあると思います。使いどころを見極めつつ、自分の指導法の引き出しを増やしていきたいと思いました。
次回のよびごえ日誌は滝澤奏有美ちゃんにお願いします!