よびごえ日誌


2024.08.22 【2024】よびごえ日誌 vol.9 夏休み番外編
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B類1年加藤優奈です。
初めてのよびごえ日誌は、某高校のコーラス部訪問を通して感じたことを書きたいと思います!(推定読了時間は 2 分です、お付き合いください笑)
私は中学、高校で合唱部に所属していました。純粋に歌うことを楽しんだ時期、大会の結果に一喜一憂した高校時代、多くの人や音楽との出会いを経て、「合唱」についてどこか俯瞰的に考えるようになった今日この頃です。今回訪問した高校のことは高校時代から存じ上げていたので、練習の様子を見学できることをとても楽しみにしていました。音楽的にも人間的にも大変素晴らしい活動に出会うことができ、とても刺激的な時間でした。はじめに、彼らの演奏自体の魅力については、私の言葉では表しがたいと感じたため省略いたします。
 
今回の訪問で印象的だったのは、すべての行動がシステム化されていたこと、多くの生徒さんが音楽についての高度な知識、技能を持っていること、それを言語化して仲間に伝える能力に長けていたことです。まず音楽室に案内されると、いくつかのホワイトボードや黒板が目に入ってきました。その日の練習計画が分単位で書かれたもの、各パートの課題と目標が書かれたもの、歌詞解釈のメモがされたもの等がありました。あらゆる事項を可視化することで、指示を待たず、各々が今するべきことに注力できる…なんと合理的でハイレベルな空間なんだ!!と衝撃を受けました。ほかにも、部員の出欠確認、通し練習の録音と再生、事務連絡といったあらゆることを、生徒さんが分担して確実に行う姿がありました。まさに社会の縮図ではないでしょうか。指導者の裁量で「高校生はこれだけしていればよい」と決めつけてしまうことはあまりにもったいない…小田さんが以前おっしゃっていたお話を思い出しました。
 
また、隙間時間に筋トレをする男子生徒さん、先輩にアドバイスを求める生徒さん、廊下で発声練習をする生徒さんなど、各々が自主的に練習に取り組んでいました。そして音楽的な知識と技能を持つ生徒さんが非常に多いです。さすが強豪校です。ロングトーンのコツや表情と響きの関係、子音の立て方などに言及する姿は、既に立派な指導者だと思いました。
 
彼らを見ながら、もし自分がこうした集団の指導者になったら…と考えていました(なんとおこがましい)。私は、角が立たない物言いにするために回りくどい表現をしてしまうのですが、頭の切れる生徒さんにそうする必要はないのです。「いい音楽をする」という揺らがない共通目標があり、その達成に向けた「根拠のある端的な指導」を求めているように感じました。なんだか冷たい書き方をしましたが、決して薄情な方々ではありません。差し入れのお菓子に歓声をあげる場面や、本番前の緊張を共有する時間は、人間味あふれるひとコマでした。楽譜の山のとなりに置かれた数学の問題集(と赤本)を見て、部活と勉強の両立を高いレベルで目指しておられる某高校のカラーがうかがえました。先生は、彼らが音楽だけに生きてはいないことをご存じのうえで、高校生活に合唱という彩りを添え、生徒さんを精神的に支えていらっしゃる存在だと思いました。たった 3 時間見学しただけの私が述べるのは恐縮ですが、以上が部活動や指導について考えたことです。
 
 
音楽的なことについては、先生の「男声も女声も(男性、女性?)、同じからだなんだから、一緒に教えてもらえばいいじゃない」というお言葉が特に印象的でした。音楽、こと声楽は性差を感じやすい活動だなと思っていましたが、それを過度に意識する必要はないと学びました。小田さんのおっしゃる、声楽は性別を問わず、身体をあけて息を流すだけの営みであるのだ、というお話をリアルに感じました。ぶっちゃけた話、私は男性を羨ましいと思うことがあります。女性でテノール歌手の方は稀有な存在ですが、カウンターテナーの方は何人もいらっしゃる(≒女声の音域の指導を実践的に行える)ことからも、男性のほうが混声合唱の指導に向いているのではないか、と思ったこともありました。しかしよびごえでの活動を通して、合唱指導には実践だけでなく理論も必要なのだという、当たり前のことに気づかされています。私は男性の声を出すことはできませんが、発声の仕組みを学ぶことはできます(そもそも声は一人ずつ違いますから、女性なら、ソプラノなら理
解できるはずだと思い込むこと自体が危険なのかも?と書いていて思いました)。これから様々な理論を学び、それを言語化する力を身につけていきたいです。
 
最後に、指導者にとって最も大切なことは性別や年齢ではなく、人間性なのだと感じました。後日行われたコンクール本番を見に行き、某高校の演奏を聴いてきました。我々は本番直前期にお邪魔したのですが、その日の通し練習では先生からも生徒さんからもいくつかの指摘がありました。帰り道に小林さんもおっしゃっていましたが、先生に対しても意見を言える雰囲気、それを受け入れてくれる先生のあたたかさが、あの一体感を生んでいるように思えます。そして本番、相変わらず素晴らしい演奏を披露されました。以下は私の主観ですが、あの時指摘があった諸々の課題が改善されており、本番直前まで成長し続けているチームなんだなぁと心にくるものがありました。指揮を振る先生の腕は、大きくは動いていませんでした。指揮者と歌い手の間にある確かな信頼関係によって、あの音楽は生まれているのだと思いました。先生に心からの敬意を表します。
 
小田さん、某コーラス部の先生と生徒さん、この度は素晴らしい機会をありがとうございました。そして 4 人の先輩方と一緒に、東京から某都市へのプチ旅行に行けたことを嬉しく思います。ここに記しきれなかった学びも多くあります。
1年前、受験勉強の合間によびごえ日誌を読んでいた私は、こんな経験ができるなんて思ってもいませんでした。今本当に楽しくて幸せです!秋学期もどうぞよろしくお願いいたします。

加藤優奈