よびごえ日誌


2020.05.28 【2020】よびごえ日誌 vol.002
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 こんにちは!A類2年生の谷夏七星です。学校のオンライン授業が始まってもうすぐ1カ月が経ちますが、私はようやくオンラインに慣れてきたところです…。早く皆さんに会いたいです!!
 
 今日は、オンライン勉強会第2回が開催されました。前回はオリエンテーションがほとんどでしたが、今日から本格的に勉強会が始動です!〈教育学的な視点〉この曲では何を体験し、学ぶことができるのかということを2曲について考えました。
 
 1曲目は『獅子の子幻想』より「都の春」(蓬莱泰三 作詩/鈴木輝昭 作曲)を、以下の流れでワークしました。
 
①小田さんによる曲についての説明
②音源を聴き、グループワーク
③グループワークの検討内容の共有
 
 ①では、新潟を発祥とする角兵衛獅子を題材とする作品で、角兵衛獅子とは、昔、芸を見せ出稼ぎをしていた貧しい家庭の子どもたちのことであることを初めて知りました。この作品は、作詩者である蓬莱泰三さんが、当時かなり悲惨な状況であった角兵衛獅子の様子を表現として幾分かやわらげたい、と仰っていることや、『獅子の子幻想』の4曲の詩や流れ、描かれている内容についても見ていきました。1曲目の「都の春」は、語り・事実のナレーション・主人公(角兵衛獅子)の心情、この3つの視点が錯綜して書かれていました。
 ②では、少人数に分かれてワークを、「作品の第一印象はどうか→作品を取り扱う上での技術的な困難箇所はどこか→作品特有の学び・体験は何か→作品を取り扱った先に、合唱団にどのような変化があってほしいか」という流れで、以上の4点について検討しました。
 最後に③では、②で出た各グループの意見を共有しました。その内容を、簡単にまとめました。
 
・技術的な困難箇所
言葉が速いことによる発音・発声の統一に難しさがある。変拍子をなじませることが難しい。Legato部分と十六分音符が多用される部分の表情のコントラストを出すことが難しそう(伴奏が先行して雰囲気を変えてくれるため、そこまで困難ではないのでは?という考えもありました)。
 
・この作品特有の学び・体験
言葉と音楽の関連性を感じる。方言のようなものが音楽に与える影響を知る。語り・事実・心情の歌い分けができる。伝統文化の背景を知る。
 
・合唱団にあってほしい変化
自分が体験していないことでも物語の世界に入って歌うことができるようになる。ほかの作品でも、多様な視点から歌詞や楽譜を捉えられるようになる。決意や感情をこめて表現することに喜びを感じるようになる。
 
 ここに記した以外にも、様々な意見が出ました。
 
 この作品の譜面は複雑で、技術的な困難箇所を挙げればきりがないと思います。しかし複雑な音形や変拍子にとらわれると、その作品の本質や本当の魅力を知らず、技術を身に付けようとするだけで終わってしまうことを、この作品を通して私たちは学びました。私はこの作品を中学生の頃に歌いましたが、当時ここまで深く考えることは全くできていませんでした。〈教育的な視点〉から曲を分析することで、曲の本質や、指導される側では気付けなかった魅力を探ることができ、とても有意義なワークでした。
 

 
 2曲目に扱った作品は、Ave Maria(Javier Busto 作曲)です。小田さんからの説明の後、グループではなく個人でワークをし、検討内容の共有をしました。個人ワークでの検討内容は、グループワークのときと同じです。
まず、ドイツ人の批評家Sven Hinzさんのこの作品に対する批評を確認しました。Hinzさんはこの作品を、「シンプルなメロディーラインで描かれた作品である。冒頭部分にある五度の2回の上行は神聖なものの表れであり、楽譜を図形として見たときに信者・信仰の素朴さや純潔さが見て取れる。」と論じているそうです。
次に、個人ワークを行い、意見の共有(各項目2,3人ずつ)を行いました。
 
・第一印象
全体的に包み込まれるような印象をもった。和声がとても幸せだった。もっと宗教曲を聴きたくなった。
 
・技術的な困難箇所
冒頭部分がdolceかつppであるため、発音や発声の共有をしっかりする必要がある。中学生はまだ声帯が未発達であるため、Bassパートの音程が低く歌いずらい可能性があるのではないか。
 
・この作品特有の学び・体験
歌い手の具体的な心情ではなく、謙虚な祈りである。その「祈り」の概念を感得できる。反響で様々な方向から声が跳ね返りよく響く教会で歌われることを意識・イメージすることができる。
 
・合唱団にあってほしい変化
ハーモニーの中での自分の役割を把握し、作品を和声的に捉え分析することができるようになる。音程を合わせて綺麗なハーモニーをつくることや、普段なじみのない宗教心を理解することを通して、他人の気持ちを理解しようとする姿勢が生まれる。
 
以上のような意見が出ました。
 
 曲名で分かるように、この作品は宗教曲です。日本では公教育の場での宗教教育は禁止されていますが、なぜ部活動などで宗教曲を扱うことが許されるのでしょうか。部活動で宗教曲を扱うことで、多様な価値観や考え方があることを知り、異文化理解を促進することができます。これからを予測できない社会では、多様性の理解によって今までの固定概念を崩し新たな見方を構築することが必要で、どうしたら子どもが多様性の理解に関わることができるのか、指導側として考えることの重要性も考えさせられました。
 
 
 大変長くなってしまいましたが…以上で活動内容の記録は終わりです!
 
 今回初めてこの活動をし、皆が多様な視点で楽譜や作品を見ていることが分かり、面白いと思いました。他人の気付きを、自分はできなかったと残念がるのではなく、新たな視点をもらえたと思う姿勢をもち、それとは逆に、自分の視点が誰かの思考の役に立つかもしれないと思い活動をすることで、より有意義な時間になると感じました。次のオンライン勉強会も楽しみです!
 

 
 次回のよびごえ日誌は、中島さんです♪