よびごえ日誌


2023.11.02 【2023】よびごえ日誌 vol.9 今年も春こんが始まります
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みなさん、こんにちは。小田です。
この前始まったかと思う夏休みも、あっという間に終わり、後期が始まりました。
 
後期の活動としては、春こんでの発表に向けて、2つの合唱作品をみんなで時間をかけて学んでいきたいと思っています。
稽古の様子は次回以降のよびごえ日誌に譲ることとして、今回は、自由曲候補には挙がったけれども、取り上げなかった作品を紹介したいと思います。
 
みなさんが将来、より良い合唱活動を実施できるようになるためには、たくさんの作品を知っておくことも大切に思います。以下、ご存知の作品もあるかもしれませんが、どれも素敵な作品ですため、これを機に聴いてみてもらえると嬉しいです。
そして、この曲だったら一緒に合唱をする仲間と①どんなことに新しく気づくことができそうか、②なにができるようになるか、③これから先の音楽学習を考えたときにどのような役割を果たすか、ということについても考えてみてもらえると、さらに、実用的な学びになろうと思います(作品の教材可能性)。例えば外国の宗教作品であれば、①その宗教ならではの考え方や言葉、ユニークな音響の美しさに気づきがあったり、②純正律の響きを求めて、4度や5度、8度の響きをきれいに響かせることができるようになるかもしれませんし、③そうした学びは、日本の作品を取り扱うときにも4度や5度、8度の響きを意識するきっかけになるかもしれませんね。日本の民謡をモティーフとする作品だったらばどうでしょうか、歴史的な問題を扱った作品だったらばどうでしょうか…、さまざまに考えてみてください😊
 
◆『合唱のためのコンポジションⅠ』(曲:間宮芳生)
日本の合唱界では、新しい作品が演奏される傾向があります。新しいというのは、例えば委嘱作品もそうですが、ご健在の作曲家の作品を指しています。例えば今年のNコンでは高田三郎(1913-2000)の作品を取り扱った学校もありましたが、比較的珍しいように思います。
よびごえのみなさんとの「学び」という観点で考えると、合唱界に携わっていると自然に接することの多い作曲家よりも、間宮芳生を含む、すでにレジェンドになっている中田喜直、武満徹、三善晃といった、過去の一時代をリードした作曲家の作品についてともに学び、今日のコンテキストで捉え直すことは重要な学びなのではないかと考えて、この作品を思いつきました。
『合唱のためのコンポジション』は間宮 芳生(まみや みちお)のライフワークと言って良いと思いますが、その最初の作品はみなさんにはどう聴こえるのでしょうか。僕はこの作品を中学1年生の時に初めて聴いて、中学3年間、ずーっと頭から離れずにおりました。中学生当時の僕には、よく分からないけれども、なんだかすごくかっこいい曲だと感じたのを覚えています。
 


 

 
◆”Cries of London”(曲:Luciano Berio)
1974年に書かれたこの作品は、まもなく50年を経とうとしている今日においても古さを全く感じさせない、緊張感のあるサウンドが特徴です。よびごえメンバーであれば、こうした作品にも取り組めると思いましたが、現代音楽の特徴である著作権の関係で楽譜代が高く、今回はそれを1つの理由として、候補に留まることとなりました……。
 

 

 
◆Mama Afrika(曲:Sydney Guillaume)
ハイチ出身の作曲家による、ハイチそしてアフリカに焦点を当てた作品です。小田はまたこういう曲にすぐ飛びつく…と思われそうですが、たしかに自分でも、こうした、日本以外の、世界や人々の歴史に目を向けられるような作品が好きなのはあるのかもしれません。
コロンブスの航海についてはみなさんご存知に思いますが、さて、コロンブスによって新大陸が発見されたことは、その後の現地人の未来にどのような影響を与えたのでしょう。ハイチは、コロンブスによって発見されたことで、先住民(タイノ人)は絶滅させられ、西アフリカの黒人は、奴隷としてハイチに強制的に連れてこられ、労働を強いられました。
ハイチの歴史はアフリカの黒人たちの歴史でもあり、そしてアフリカは人間の誕生の場所ともいわれる(と作曲家は捉えている)、こうしたテーマを持つこの曲は、よびごえのみなさんとともに学ぶ価値のある、大変に魅力的な作品に思えました。しかし、打楽器が必要なため、春こんでは演奏不可でした…。
 

 
◆『唱歌』より第3楽章(曲:千原英喜)
間宮の『合唱のためのコンポジション』と似た発想の作品ですが、千原の特徴ともいえる、甘美な旋律が含まれている点で、間宮に比べて多分に今日的です。僕もこの曲を歌ったことがありますが、なんとも不思議な作品で、各パートのかけあいにかっこよさを感じたことを覚えています。テキストは トテシャン チリリン など、口三味線の言葉で構成されています。
 

 
◆I Will Lift Mine Eyes(曲:Jake Runestad)
Eric Whitacreというアメリカの作曲家がいるのですが、彼の作品を初めて聴いたとき、とてもびっくりしたのを覚えています。日本では”Sleep”(https://youtu.be/aynHSTsYcUo?si=U8Vg6NEbDnTZe8bP)や”Leonardo Dreams of His Flying Machine”(https://youtu.be/Nbek1UnCh48?si=4nOVLt77mnY7FP3u)が流行ったように思いますが、彼の美しいクラスターサウンドは、その後の世界中の合唱作品にも影響をもたらしたのではないかと考えています。
Jake Runestadもアメリカの作曲家で、”I Will Lift Mine Eyes”も美しいクラスターサウンドを特徴としており、加えて静かな美しさと温かさを感じさせてくれる作品です。こうした作品の場合は、人数がいればいるほど演奏効果は高まると思いますが、逆に少人数でどのように音楽を成立させることができるのか、そこは学びとして、みなさんと一緒に探究する余地があると思いました。
 

 
 
それでは、今日の日誌はここまでとして、次回からは稽古の様子を記録していきましょう。
後期もみなさんと一緒に、合唱と教育について、たくさんのことを考え、経験できることをとても楽しみにしています!
まずは目の前の2曲の土台作りに励みましょう!!!

小田直弥